『スターアライズ』から4年、シリーズ30周年という節目のタイミングで『星のカービィ』に大きな動きがありました。任天堂のトピックス内の記事では「『星のカービィ』初の3Dアクション」、HAL研公式twitterでも「本編シリーズ初となる3Dアクション」と称されるだけあり、従来のシリーズ作品と比べても注目度が高い『ディスカバリー』ですが、ひとまず、カービィと3Dとの歩みは整理しておこうかと。珍しくですますで書きますけれども。
カービィシリーズにおいて初めて3Dグラフィックが採用されたのは『星のカービィ64』(2000年)でしたが、あくまでもグラフィックやキャラクターを3D化しただけで、本編自体はオーソドックスな2D横スクロールアクションでした。GCで発売された『カービィのエアライド』(2003年)では、「シティトライアル」モードにおいてマシンの乗り換えのためにカービィを3D空間で操作することができたのですが、あくまでも移動、ジャンプ、5回のホバリングのみ(要するにスマブラ仕様です)とその操作は最低限のものに制限されておりました。
本編において3Dアクションが構想されたのは、何も『ディスカバリー』が初めてではありませんでした。2005年にGC向けに発表された『星のカービィGC(仮称)』がそれです。と言っても、当初はヘルパーシステムを復活させたSDXチックなゲームが予定されていたのですが、開発が難航する中で内容も幾度か変更され、その案の一つに3Dアクションがあったのです。まあ、この顛末が明らかにされるのはだいぶ後、『星のカービィWii』(2011年)発売後の開発者インタビューでのことになるのですが。
一旦は没となったこのアイデアは熊崎ディレクター(今はシリーズ全体を統括するゼネラルディレクターでもあります)がシリーズ開発の中心となっていた2010年代に再利用されることになります。『星のカービィ ロボボプラネット』(2016年)のサブゲーム「カービィの3Dチャレンジ」及び、それをアップデートして一本のゲームに仕上げた『カービィのすいこみ大作戦』(2017年)ですね。「すいこみ」とある通り、今作のカービィは初代さながらに吸い込みと吐き出しだけで奥行きのあるステージを進んで行くタイプのゲームになっています。最後にはボス戦も用意されております。最新のPVの映像を見る限りだと、『ディスカバリー』もまた、これらのゲームの延長線上にあるタイトルであることは間違いなさそうです。恐らくは、将来的な3Dアクションを制作するベースとして『すいこみ大作戦』は作られ、『星のカービィ スターアライズ』(2018年)の完成をもって、本格的に開発が始まった、と想像します。
そしてもう一つ忘れてはならないのですが、前作『スターアライズ』においても3Dによる戦闘シーンが存在します。ラスボスのエンデ=ニル戦です。『ディスカバリー』のPVの最後に今作の敵勢力と思しきビースト軍団のボスとの戦闘シーンがありましたが、あの場面ではエンデ=ニル戦での意匠が発展させられていると思いました。あくまでも2Dカービィの総決算としての『スターアライズ』では3Dシューティングという形に留めていた戦闘が、いよいよ『ディスカバリー』で本格的な「星のカービィ」のアクションとして昇華するのを見たようで、ワクワクが止まりませんね!
『スターアライズ』発売当時、熊崎Dがことあるごとにインタビューで「集大成」「総決算」と繰り返していたこともあり、おおよそ予想できたことではあるのですが、90年代に『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』が既に通過した3Dアクションの領域に2020年代になって遂に『星のカービィ』も一歩を踏み出したというのは、『2』とか『64』をリアタイしていたオールドなカービィクラスタからすれば、画期的なことなのです。
語りたいことはそれこそたくさんあるのですが、ひとまずいかに『星のカービィ』の3Dアクションが画期的なのか、ということについてお話ししました。現場からは以上です。