『百代の用心棒』 ジュナイパーが歌っていたあのアレについて語る(後編)

崖上からゴロゴロ山地を、そして山の向こうの未来の「ハクタイ」を見つめる、というテイで
さあて、こないだの続きです。『百代の用心棒』でジュナイパーが嘴遊んだ曲を紹介する枠。しかし、後半になると曲の登場頻度がグンと増すというね……ミュージカルかな。
 
13:『Music』 Cornelius 2006年
 第7章、酒の席で泥酔した勢いで歌い出す
前のフリッパーズ・ギターからの小山田圭吾ことCorneliusから。なぜ、この曲を選んだのか、というツッコミは免れないであろう。ちなみに及第点のツッコミは「せめて『FANTASMA』からじゃないの?」です。ちなみに、今作で登場する楽曲の中では最も新しい、DP発売年の一曲。MVの気持ち悪さはインパクト大だから是非見て。
ちなみに『Music!!!!!!!』と表記するとKIRINJIの曲になります(関係はない)。
 
 
14:『冬のリヴィエラ』 森進一 1982年
 第8章、ピカチュウから人夫の間で流行っていると言われる。
森進一といえば誰もが知る演歌歌手なんですが、この曲に関しては演歌色のない80年代らしい爽やかなシティ・ポップ調の楽曲である。手がけたのは作詞:松本隆&作曲:大瀧詠一という、伝説のロックバンド「はっぴいえんど」元メンバーにして、クリエイターとしても日本のポピュラーソングの黎明期を牽引したと言うべき二人だから当然のこと。ちなみにこの曲を大瀧自身がセルフカバーした際には「冬のリヴィエラ」ではなく英語の歌詞で「夏のリヴィエラ」と歌っていたりする。
 
 
15:『春よ、来い』 松任谷由実 1994年
 第8章、崖上でジュナイパーが立て続けに歌う曲その1
春先になると必ず耳にするユーミン90年代の代表曲。後編部分を書き始めるときにも、『春よ、来い』を歌うくだりは入れようと思っていた。それを聞いたピカチュウが珍しく「いい曲だな」という。これが第8章のコアになるイメージで、その連想がから立て続けに四季に関する歌が登場する……という筋でした。後半はとかく、無理やりにでも曲に展開を引っ張ってもらうってことを繰り返していたのだった。
 
16:『ENDLESS SUMMER NUDE』 真心ブラザーズ 1997年
 第8章、崖上でジュナイパーが立て続けに歌う曲その2
1995年に発表された真心ブラザーズの代表曲『SUMMER NUDE』のセルフカバーバージョン。アレンジはSMAPの『青いイナズマ』や『SHAKE』を手がけたのと同じ人というだけあって、聴いていると懐かしい90年代の空気感が蘇るかのよう……今作にやたらこの時代の曲が多いのも書き手の聴いてるヤツが偏っているから、というのは否めない。この間リアルの知り合いに最近何聴いてるの? と訊ねられてこの曲のことを言うと「ブレないねえ」と半ば呆れられたのだった。何でや! いい曲じゃん!
 
 
17:『風立ちぬ』 松田聖子 1981年
 第8章、崖上でジュナイパーが立て続けに歌う曲その3
80年代トップアイドル、聖子ちゃんカットバリバリの頃のヒット作。作詞作曲はさっき登場した『冬のリヴィエラ』と同じ松本隆大瀧詠一。いかに、彼らがこの時代の音楽を形作っていたかがわかります。これを聴いていると80年代という昭和日本の絶頂期の風を感じますねえ(?)。ただ、当時の風俗とか見る限り、陰キャからしたらただただ生きにくそうな時代ではあります。傍目から見れば楽しそうなんですけどね。そんなこと言ったら、90年代だってオウムやら酒木薔薇やら陰鬱な時代なワケだけど……
 
 
18:『君は天然色』 大瀧詠一 1981年
 第9章、ジュナイパーパラドックスポケモンを薙ぎ払いながら嘴遊む
そして満を持して大瀧詠一自身が登場するというワケ。これを語らずに日本のポピュラーミュージックは語れないレベルの絶対的名盤『A LONG VACATION』(キムタク主演の大ヒットドラマ名もこのアルバムに因む)の冒頭を飾る曲。現在でもCMとかによく起用されているのでイントロは聴き覚えあるって人は多いはず。しかし、大瀧詠一は2014年末に惜しまれつつも急逝……最近グループは違うけれどYMO高橋幸宏坂本龍一が相次いで亡くなったりして、急速に一つの時代の終わりを感じてしまいますね。
 
 
19:『Rain』 大江千里 1988年
 第9章、突如現れたウネルミナモを前にして
大江千里は80年代に活躍したアーティスト。一時期は山田邦子(8〜90年代の芸能界に君臨した女帝。去年の「M-1グランプリ」では審査員も務めました)の「やまだかつてないTV」にも出演したりもしてました。大江の楽曲はバブル期特有の躁か? というくらいのノリノリ感がウリなんですが(『YOU』とか『夏の決心』とか)、『Rain』はそれとは裏腹にしっとりとした抒情的なバラード。あの新海誠がこの曲をテーマソングにして『言の葉の庭』を製作したことは有名かと思います(映画では秦基博のカヴァー・バージョンですが)。ちなみに現在、大江はNYでジャズピアニストとして活動中。最近は『ニューズウィーク』にKPOPについて見当違いな寄稿をして顰蹙を買っていたらしいですね……けど、好きな曲は多いですよ。
 
 
20:『SILENT SNOW STREAM』 Cornelius 1994年
 第10章、大勢の氷ポケモンが「ひひいろのこどう」を打ち消す雪を降らす中で
怪物どもの頭であるコライドン(名前こそ出してませんが流石に気付きます……よね。アギャッス)と対峙するサワリみたいな場面で、なぜこんなマイナー曲を出したのか、完全にツッコミ待ち、なんですけどいい曲だから仕方ないねと強がりもされる(そういえば古風な文体で書くとつい出ますね「〜される」とかいう自発表現)。フリッパーズ・ギター解散の翌年に発表されたCorneliusの1st albumからの採用。とかく、2021年の五輪直前の騒ぎで変に有名になってしまったんですが、昔の彼がクズだったのはわりと界隈では有名な話ではあったので、なんで今更……というのが当時の感想ではあったのです。空気とは恐るべきものだ。ラーメンズの人もアレで干されたしなあ。
 
 
21:『しらけちまうぜ』 東京スカパラダイスオーケストラ小沢健二 1995年
 終章、追い縋るピカチュウをスルーしながら歌う
オザケンの曲はあらかた聴いてきたと思っていても、こういう取りこぼしがあるのです。何せ、スカパラのアルバムにしか収録されておらず、気付かないと本当に気が付かない! しかも、今曲は1975年に小坂忠というアーティストが発表した楽曲のカヴァーというのも肝である。小坂は60年代後半に松本隆(また登場である)らと「エイプリル・フール」というバンドに所属しており、それが方向性の違いで解散した後に新たなバンドを組むことになっていたのだが、諸々の事情があって離脱。小坂の欠員を補うかたちで大瀧が加入して「はっぴいえんど」が結成された、という経緯がある。小坂はソロとして『HORO』などのアルバムを発表後、ゴスペス歌手に転身するなど、独自の道を進んでいった。それにしてもオザケンがこの曲をカヴァーするに至ったのはなぜなのだろう、不思議な巡り合わせである。
 
↑こちらが原曲
 
22:『白い雲のように』 猿岩石 1996年
 終章、天冠の山麓を去るジュナイパーが一匹嘴遊む
今の若い世代となれば、有吉弘之がむかしユーラシア大陸ヒッチハイクだけで旅するなんていう過酷な企画にカラダ張って臨んでいたことなど知らないかもしれない。『電波少年』の一企画でブレイクしたのち、10年ほど消えた期間を経て毒舌芸人という触れ込みで再登場したのを足掛かりに、あれよあれよと大物芸人という不動の地位を手にし、ましてや人気女子アナとゴールインするなんて誰が想像しただろう。それはともかく、『白い雲のように』。その場のノリで作られたにしては、なかなかいい曲です。去年の紅白歌合戦でも披露されたりしましたね、ちなみに発売当時は大ヒットしたのにかかわらず出られなかったそうな。そういえば、今作には出てこなかったけどホワイト・ビスケッツ&ブラック・ビスケッツだとかこの時期のTV番組のタイアップで登場した芸能人の歌、バカにできないし全然いい曲が多いんですよね。……しっかし有吉の相方の名前、何だったけか?
 
 
振り返ってみれば、趣味が全面に出たようなセレクトでしたねえ。それにしてもなぜジュナイパーがこんな曲を知っているんだろうか?……そもそもの疑問を置いて、ヒスイからシンオウへ時は移ろいゆくのである——