久しぶりの更新、を兼ねた関西けもケ振り返り

 

サボっていたという認識ではないんですよ。
ファンボをやり始めると、こっちのブログは何に使おうって考えがまとまらなくなって、それに歳をとるにつれて時間の進みも早くなったような気がして、いつの間にか5月なんですね。

 

正直、そのあたりまだ考えまとまっていないんですけど、GW明けたので軽く近況報告でも。

 

大阪的な、あまりに大阪的な(※関西けもケとは関係ありません)

 

先月ですが、関西けもケット11に行ってきました。
「獣文連」サークルの売り子として、代表の岸間夜行さんのお手伝いをしてきました。

 

当日は朝早く来れば、設営の手伝いができ、するとカタログがお礼にもらえるということで意気揚々と参加しに行ったんですけど、バカなので申請の手続きを忘れていました(※事前にメールで登録しておかないと参加できない)

 

※本来はここら辺でインテックス大阪の外観を載せるべきなのだろうが、けもケ会期中は原則撮影禁止。なので、ご容赦ください。

 

夜行さんには「んもぉ〜!」ってちょっと怒られました。ほんとすんませんでした。
よって、サークル入場が始まるまで実に2時間! 迷惑にならないよう会場周辺で待機せざるを得なかったのでした。バカですねえ……

 

で、やっと入場できた頃には設営はバッチリ終わっておりました。平謝りしながらスペースで夜行さんと合流し、今度はビシバシと指導を受けながら設営を手伝っておりました。

 

設営って文字だけだとたった二文字なんですけど、考えないといけないことってたくさんあります。本当にたくさんあります。テーブルに敷く布は防火じゃないとダメだとか。

 

頒布物を並べるために必要なアイテムや小物も色々あって、「へ〜」となると同時に、果たして今後一人でサークル出展できるんだろうかと一抹の不安も抱き。というか、本来はこのけもケでデビューするつもりでいましたからね……!

 

実をいえば売り子は三度目なのですが、身についていないことが圧倒的に多いです。今回夜行さんに教えられたこと、前回、前々回でもおそらく言われている。学びが下手くそになっているという自覚は、あります。

 

設営完了!

 

反省もしつつ、今回のサークル参加を振りかえってみると、インテックス大阪、TRCよりもだいぶサークルスペースが広々としてます。


特に後ろ。TRCだと、背後のサークルと文字通り背中合わせだった気がするんですが、今回は裏にリュックやスーツケースを置くゆとりがありました。

 

一般参加サイドだと、狭かったって意見も散見されましたけど、売り子として見てる限りはそんなに狭いという印象は受けなかったです。芋洗いみたいなことにもなってなかったし。

 

さて、設営完了したら開幕前に夜行さんと軽く挨拶回り。

 

まずは『獣文連第6集』の表紙絵を描いていただいたKatkichiさんのサークルへ。1月の新春でも挨拶はしていたんですが、改めて。


Katkichiさん、今回とてもいい仕事をしていただき、感謝しかありませんでした!
おかげもあり、とてもいい本に仕上がったので、第6集、みなさん是非買っていただければ。

 

https://kemobunren-shop2.booth.pm/items/8235039?utm_source=pixiv&utm_medium=promotion&utm_campaign=pixiv-promotion&utm_content=work-all_items

 

Katkichiさんのところ、決済に電子機器を使っていて便利だなーと思っていたら、すごかったのはレシートにも自前のイラストが印刷されていたこと。こういうこともできるのか……ヤケないように大事にしたい。

 

いい……

 

同じ獣文連の一員で、今回『ペンギン文学アンソロジー』を出された辰巳ルペさんのサークルは、開場ギリギリまで準備に追われているよう。

 

本邦初(!?)のペンギン文学本

https://booth.pm/ja/items/8259619

 

ジンオウガ小説を寄稿させてもらった烙雷さんのサークルにも挨拶。僕から何も言っていないのに、なぜか今朝のやらかしのことを知っていました。なんでやろなあ……それはともかく烙雷さん、今回も無用な心配をおかけしほんとすんませんでした。

 

短いながらジンオウガ✖︎ナルガクルガのホモ小説を寄稿してます。読んでね!

https://laquray.booth.pm/items/8233191

 

そして開場。
スタート前にスタッフが一丸になって掛け声。これが来るといよいよかって気分になります。
アナウンスで開場が告げられると、大きな拍手。これもまたけもケ(というか同人サークルイベント)の醍醐味ですね。

 

開場中にあったことを全部は書ききれないので、今回は獣文連絡みのことに絞って書きますが、関西初出展だったこともあってか、本当に初めての人から、字書きの人まで色々な方にお越しくださいました。

 

字書きあるあるだと思うんですが、普段正面切って文字とか小説のこと話す機会ってないんですよね。そこそこ長く字書きやってるおかげで知り合いはいるんですけど、こういう場所で立ち話しながら意見交換できる時間は貴重でした。

 

獣文連そのものにも興味を持ってくれる人もいました。今後、メンバーだけじゃなくてケモノで小説を書いている人たちを巻き込むような企画も検討中です(会場では口頭で話していたんですけど、正式発表はもうしばらくお待ちください)。

 

今回、最新の第6集以外にも既刊を持っていたのですが、まとめ買いする人が多くて驚きでした。在庫のあるやつ(第2集、第4集、第5集、第6集)合わせるて4800円。同人誌を買うにしてはなかなかの出費になるのですが……獣文連を選んでくれたことはとても嬉しい(それと同時に、拙作がどう受け止められるか不安まじりでドキドキしているのですが)。

 

それにしても、サークル参加されてるみなさん、差し入れまでいいもの持ってきていた。僕はそういうものを買うこと自体思いも寄らなかったので、すごく参考にしてました。

 

『獣文連第5集』の表紙を描いたたかさきけいいちさんにもお会いすることができたのですが、そのたかさきさんからいただいた愛媛みかんのキャンディー。ダンボール箱をミニチュアにしたような箱が可愛らしかったです。キャンディーも、もらった後に舐めながらサークルに立っていました。美味しかった。

 

そういえば、Katkichiさんの色紙すごく買いたかったですけど、流石に挨拶時は自重(ずるっこだし)。振り向けばチラッと向こうのサークルが見えるので、スペースにいる間にたびたび様子チェックしてたんですけど、まあ開幕したらすぐ買われるよね……(

 

あとポーチも欲しかった。今度サークルにお邪魔するときに買うことにします(在庫、残っていればいいなあ)

 

16時、関西けもケット11閉幕——


あっという間でしたけど、濃密で楽しい時間でした。

 

個人的な学びとしては、これからサークルを自分で出すということになれば、責任重大だなと。


まずはサークルカットから申請まで不備を犯さないこと(犯した)。
けもケット運営からの連絡はこまめにチェックすること(しなかったので設営の手伝いができなかった)。
サークル参加する場合は、本を入稿してからが本番(そのあたりの準備は、今回ほとんど夜行さんがやっていました。頭が下がる、下がる!)。


この3つあたりは肝に銘じておきます。今度はこれをほぼ1人でしなければならないわけで……できるかなあ。でもやらなければなんですよね。

 

撤収後は、普通に飲みました。新大阪で飲んで、天王寺で飲んで……ちなみにけもケ前日も前夜祭と称して北新地で飲みましたし、けもケ翌日の帰る前にも道頓堀で飲みましたとさ。もっと言えば東京に帰る新幹線でも飲みましたし、帰り道でも酒を買って帰りました。僕はいつも飲んでるんですね。 

 

本場のたこ焼き。衝撃的な美味さだった。

 

雑記251222

 

先日ふぁんぼを開設したので、あっちで書いたことをそのまま転載するのも意味ないなーと思っているこの頃です。

 

AI画像生成したイラストをカバーに。ザックリくらいならわりと見られますね……

 

今月はわりと執筆の調子は良し。懸案だった長編の更新が久々にできたし、オリジナルも上げられた(完全エロなので、そこはpixivの読者層に媚びてるきらいはあるかもだけど……)(それに、集中力がないので、本当に亀速だし、当初想定よりだいぶ時間かかってるってのもあるんだけど……)

 

年内はあと何本かアップできればな〜、ってものはあるのでもう少し頑張りたいところ。

2025年も残すところ10日を切りましたね。やったりやらなかったりしている振り返りはどうするか……

なぜかガラル転生したコライドンだけど、イケメンなのですべて何とかなった 49話

 

立て続けにコライドンお兄さんお兄さんです。なんか48・49話と一気呵成に書けました。

これで44〜49で次回のpixiv更新分が溜まったことに。前回が去年の9月なので、1年3ヶ月ぶり……そいつはちょっと軽く全体を見直してからアップすることとします。

 

 49

 

 「あっ!……あっ!……あっっ……」
 何回も折檻を受けているうちに、下半身の感覚が薄れてくるのをコライドンは情けなくも感じていた。
 ジャラランガにしても100回まで数えるつもりは毛頭ないようだった。実際、途中からカウントするのを忘れて、何とも思っていなかった。闇雲に叩いてくるかと思えば、叩くのが面倒になったとでも言うようにペチペチと叩いたり、ぺっとりと鱗の表面を臀部にあてて、程よい脂肪と筋肉で膨れ上がった尻の形を堪能したりした。
——おら、しっかり堪えろよ。ケツ叩かれてるくらいで悶絶してんじゃねえよ。テメエは立派な、マッチョな雄さんなんだからよ……
「ぐあっ!……あっ!……くうっ!……うっ……!」
 時折、腕が疲れるのかしばし鱗を団扇のように仰いで小休止しているあいだ、外気に当てられたコライドンの尻に、俄かに爪で執念く引っ掻かれたかのような痛みが生じた。辛いものをひとしきり食った後から、痛烈な辛みが舌に感じられてくるのと同じように、身悶えしたくなるほどの激痛が、立派な体躯をした雄のカラダに走った。が、ジャラランガに軽く持ち上げられたカラダは、思うようには動かず、ただ地べたを這うヤクデのようにもぞもぞと腰を揺らすのが精一杯だった。
——へっへっへ、痛えかよ、おい?
「あんぎゃっ!……」
 およそコライドンが聞いたことのないような言い方で、ジャラランガは訊ねる。頼りにしていたはずの相手から向けられる軽蔑と憐憫が入り混じったような眼差しが、コライドンの心に刺さる。悪いことをしたのは自分の側なのだと理解はしていても、後悔とか悲しさとか仄暗い感情が一挙に押し寄せて、まったく整理がつかない。
 このお仕置きはいったいいつまで続くのだろうと思うと、空恐ろしかった。
「あんぎゃっす!……ゆ、許してくれ……」
——んん? 今何つった?
 聞こえているくせに、わざと意地悪なことを言う。がむしゃらに十発は鱗で尻を叩いてきた。その音にかき消されて、弱々しい雄の声なんて聞こえないとでも言わんばかりだった。
「許してくれ」
 コライドンは絞り出すように叫んだ。
「俺、もうあんなことしないから。勝手にお前から離れることだって、しないから」
——んなこと言われて、俺が信用するとでも思ってんのか? お馬鹿さんだなあ。
 まるで聞き分けの悪い子どもに言い聞かせるように話しながら、無情にも鱗を尻に振り下ろす。今度のは、コライドンのカラダになおさら効いた。尻たぶに黒いアザが刻まれている様子をコライドンは想像し、恥辱心に顔を覆ってしまいそうだった。
——けっ。いっぱいお仕置きされて、むしろ気持ちいいって思ってんだろお?
「ち、違う。違う、違うって……」
——テメエの口は嘘しかつかねえなあ?
 そう言って手首を捻って鱗を縦向きにすると、峻厳な尻の割れ目にそいつを挟み込もうとすると、不意打ちを喰らったアナルがキュン、と疼いた。
——下の口の方がよっぽどお利口だぜ、テメエはよお。それに、相変わらずチンポぶら下げやがってるし、本当に見下げ果てた雄だな。アイツと比べてもだいぶ下等な奴だよ。おい、聞いてんのか、コライドンよぉ?
「うぅっ……」
 またしても涙を流しながら、ジャラランガからの侮辱を受け止めていた。頭の中はもうしっちゃかめっちゃかになっていた。病気に苦しめられているかのように、とにかくこの責苦が終わってほしいということしか考えられなかった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。俺、だから、もうお前を裏切ったり、ヤな思いさせたりするの、イヤだから……だから……」
 許しを乞うと言うよりは、祈りを唱えるようにコライドンは口にした。ジャラランガが俺のことを許してくれるかくれないか、ということさえどうでもよくなっていた。何でもいいから、早くこんなこと終わらせてほしいとだけ願った。
——うーん、どうすっかな。
 その間にも、何回もコライドンのカラダに罰を与えながらジャラランガは長考した。
——じゃあ、ケツ叩かれながらセンズリこいてみろよ。変態らしくな。
「……うっ」
 それはあまりに馬鹿げたことだったが、コライドンには拒否する理由もなく、拒否するに足る尊厳だってとっくに失われていると思った。辛い目に遭ってなお、性的興奮を覚えているカラダに相応しい恥辱だろう。なおもきつく打たれる尻の痛みを我慢しながら、片手で勃起したペニスを掴むと、ゆっくりと上下に扱き始めた。
——けっ。いかにも手慣れてやがんなあ。あいつらとヤッた時もそんなことしてたんだよな。俺に内緒で。最悪の変態だな、テメエは。
「ふうっ!……ふうぅ!……」
 そんな罵倒をトロリとしてきた意識で受け流しながら、自分の哀れな肉棒を無心に搾った。獣特有の、包皮のなく剥き出しで果実のように赤々としたそれは、触れるだけでも敏感に感じ入って、いっそう硬く膨れ上がる。たまらないという気持ちになり出したのは、肉棒を弄り始めて間もなかった。そのうち、手淫の快感だけでは足りなくなって、自分から腰を緩やかに前後させて少しでも多くの刺激を得ようと頑張る。そんな雄の様子をジャラランガは見下すように見物していた。
——グズグズしてんじゃねえよ、イクんなら、とっととイけよ、ほら。
 急かすようにパンパンと鱗で叩いてくると、コライドンは自棄になって手の動きを早め、腰も波打つように揺らした。自分と密かに交尾をした若々しいプテラオンバーンがしていたような腰の動きを思い出すと、はしたないことは重々わかっていたが、やはり雄を愛する雄としての欲情が猛りたってしまうのをコライドンは感じた。
 イクのは存外早かった。尻の奥がギュッと圧迫されるような感覚がしたのち、ペニスから勢いよく子種が放たれた。コライドンの足元は瞬く間に、白くドロドロとした刺激臭のある体液の洪水を起こした。
——けっ、汚ねえモーモーミルク、だな。
 吐き捨てるようにジャラランガは言った。
——いいカラダしてる雄が、青臭えガキみてえにシコって、射精してやがる。恥ずかしいぜ、ったくよお……
 汗や尿の混じった雄特有の臭気が、むんわりと立ちこめてきていた。臭いはコライドンの口吻にまで達してくるのだが、その臭いに対して、顔を背けたくなるような、そのままじっくりと嗅いでいたいような、相反する感情が同時に湧いてくる。
 たっぷりと射精した後に来る、尻が薄ら寒くなる感覚にコライドンは力なく揺蕩っていた。ジャラランガの腕が腹に食い込んできて、ぐっと圧迫する。
——よくできたじゃねえか、変態のクソ野郎。
 鱗で優しく傷ついた尻たぶを撫でる。
——ご褒美に、俺が気の済むまでぶっ叩いてやるよ。
「えっ、そ、そんな」
——へへっ。これくらいで許すわけなんてねえだろ? テメエみてえなワンパチにも劣る雄のクズのことなんてよ。ちょっと希望見せたら喜んでシコリやがって、きめえんだよ。テメエのそういうところ、本当大嫌いなんだよな。
 ようやっと登った崖から再び突き落とされるような気分だった。奴隷を手名付けるように鱗は振り下ろされ続けた。弾けるような音を立てて、尻肉が悲鳴を上げる。
「あぎゃあっ……ぎゃっ……ぎゃあん……すっ」
 大柄な体躯をブルブルと震わせながら、コライドンはまた泣いていた。厳しい躾のために、他者の目ばかりを気にするようになってしまった子どものようだった。ジャラランガに拾われてからのことが、次々と頭に思い浮かんだ。つい数日前までのことなのに、もう叶わなくなってしまったのか。あんな馬鹿な行動、俺がしなければ、こんなことにはならなかったのに。
 思考までが被虐的になっていくにつれ、あれだけ吐精したはずの肉棒がまたむくむくと膨らみ出していた。コライドンから乾いた笑いが込み上げてきた。ジャラランガが指弾する通り、俺ってほんとどうしようもない変態なんだ。ケツはもう痛すぎて訳がわからないけど、ジャラランガにやられるなら本望だ。もっと叩いてほしい。もっと恥ずかしいところを晒してほしい。それで、心の底から軽蔑してほしい。自棄になって、そんなことを考えた。
「ふふふっ」
 おかしな声がしたのは、あまりにも唐突だった。

なぜかガラル転生したコライドンだけど、イケメンなのですべて何とかなった 48話

 

ちょっと間が開きましたが、コライドンお兄さんです。

わりとコライドン熱というか、コライドンをエッチな目に遭わせたい、雄として少し情けないことをさせたい、曇らせたいみたいな感情が、三大欲求のように湧いてきます。どうでも良いんですけど、うちのiOS「三大」が変換で出てきません。

内容は47話に続いてスパンキングです。49話もそんな風に続くと思います。更新できるまで、あと1話……pixivも2ヶ月更新できていないので早くしたい。

 

 48

 

「あっ!……あっ!……ぎゃ……っ!……」
 一定のリズムで振り下ろされる手が、手酷く折檻するたびに、コライドンはまるで子どものような悲鳴を挙げてしまう。
 いくつもの鱗をまとったジャラランガの腕の力は重々しかった。ただ上方から落下する勢いだけで、ここまでのエネルギーが生じるものなのかと感服してしまいそうなほどだった。しかし、いざ尻を叩かれる痛みは並大抵のものではなかった。これをあと何発浴びせられるのだろうと考えると、慄然としないではいられなかった。
「ご、ごめんっ! ごめんって……」
 そう懇願するものの、そんな言葉を遮るように、無情にも猛烈な平手が振るわれる。
——んなこと言ったって、よう?
 ジャラランガは薄笑いを浮かべていた。
——俺が見てねえところで何匹の雄とヤッてたんだあ? プテラオンバーンとかいう、あのクソガキどもとこっそりエッチしてたってこと、俺が知らねえとでも思ってたのかよ? はっ! 舐められたもんだぜ、ったく。
 執拗に責め苛むようなねっとりと非難の言辞を浴びせられて、コライドンは恥じらうばかりだった。ジャラランガに指弾されたことは、否定できないことではあった。言い訳をしようとしても苦しかった。それに、雄たちとカラダを交えた時に少なからず感じた悦びを思い出してしまい、つい股ぐらが疼いてしまうのも情けなかった。
「……あっ!」
 下腹に力を入れて堪えようとしても、興奮して血液を溜め込んだ男根が肉襞を掻き分けるのを、どうすることもできなかった。
——おっ!……
 わざとらしく叫びながら、ジャラランガの視線が股下を覗き込むのが感じられて、コライドンは空恐ろしい思いだった。途端に、自分自身の浅ましさを痛感して、今すぐにでも悔悟したくて堪らなかったけれども、四つん這いの格好で、叩かれるべく尻を突き出した姿勢になったところで、そんな願いが叶うべくもない。
——ケツ叩かれて、チンポおっ勃てるなんてな。そこまで変態な野郎だとは思ってなかったわ。軽蔑しちまうよなあ、おい……。
 勃起してしまったコライドンのことを、ジャラランガはせせら笑った。その全身が微動するのに併せて、しゃん、と鱗の擦れる音が鳴ると、コライドンの体は本能的に怯え、カタカタと震える。
——テメエみたいなどうしようもねえ野郎は、もっともっと痛めつけて、躾けてやんねえとなあ。
 何かをベリ、ベリ、と剥がす音が聞こえた。文字通りカラダの一部が外れる生々しい音に、コライドンは打ち震えていると、急に硬質でヒンヤリしたものがお尻の肉に触れて、ゾクリと全身が総毛立った。
「うっ……!」
 それはジャラランガが握っているのは太い腕を飾っている鱗の一つだった。薄く平べったい形をしたそれは、月の光を浴びて妖しく照り輝いている。コライドンがギョッとしているのを見てジャラランガはご満悦そうに、笑った。
——よし、これでお前をもっとワンパチみてえに鳴かせてやるとするかな!……
 気安い口ぶりとは裏腹に、素振りした鱗の風圧は凄まじかった。鱗がわざとらしく肩甲骨を掠めると、まるでかまいたちのように鋭い空気がコライドンの背中を刺すのだった。
 この鱗が、尻たぶを打つことを想像するだけで、コライドンは恐ろしくてたまらない。自ずと、胴体を支える四肢の力が萎えてしまいそうになる。そんな情けない雄の心情など、とっくのとうにお見通しであるかのように、ジャラランガは摘んだ鱗で、ヘラで漆喰をならすようにコライドンの尻から背中にかけてをやたら丁寧になぞる。
——何ソワソワしてんだよ。これで、お尻叩いてほしいってか?
「ち、違っ……」
——チョロネコぶってんじゃねえよ、テメエが尻を虐められるのが大好きな変態だってことは知ってんだよ。ほら、言ってみろよ「俺のお尻、あなたの鱗で叩いて欲しいっす」ってな!
 コライドンの返答など、どうでも構わないといった調子でジャラランガは語を継ぐ。反論したくても、言葉が出てこなかった。厳密に言うならば、反論しようにもこれまでのコライドン自身の行いからすれば、何を言ったとしてもジャラランガ以外の雄たちとそういう関係を持ってしまったという事実を前にすれば、どんな言い訳も意味を成さないことを自覚していた後ろめたさから、反論することを自粛してしまっていた。
——ほらよっ。
 勢いよく振り上げられたかと思えば、獲物に狙いを定めたウォーグルの如く、鱗を握った腕が急降下したが、それはコライドンの縮上がった尻に衝突する寸前のところで、ピタリと止まった。
「あぎゃっ!……」
 叩かれるものだとばかり思っていたコライドンは素っ頓狂な悲鳴を挙げてしまった。それと同時に来るはずだった痛みがなかったことに、安心するというよりはかえって困惑してしまう程だった。勃起したままで収まりの利かなくなった雄棒が機敏に揺れる。そんなコライドンの動揺を、ジャラランガが見逃すはずもなく、
——ははははっ!
 大袈裟な程に笑って見せた。思いもがけずガラルという土地に放り出されて世話になってから、ついぞ聞いたことのない哄笑だった。屈強な体躯をして、敵なしのはずの雄が無様な姿勢で尻への懲罰を受けているのが、ジャラランガは心底楽しくて堪らないといった様子だった。それ程までに、ジャラランガは俺に対して怒っており、軽蔑さえしているとさえ思うと、コライドンは気が気でないのだった。しかし、縋るべき藁から自ら手を離すという愚を犯してしまった手前、後悔するのさえ不遜極まりないことなのも、確かだった。コライドンの思考は袋小路に陥ってしまっていた。
——じゃっ、遠慮なくやらせてもらうぜ、相棒。
 心の準備もさせてもらえないままに、出し抜けに鱗がコライドンを打った。平手とは比べ物にならないくらいの甲高い音が、キバ湖の瞳に鳴り響いた。瞬間的に走る痛みも、並大抵のものではなかった。
「あっ!……きゃっ!」
——へへっ。やっぱテメエはイヌなんだな。ワンパチよりもイヌみてえだ。
 ジャラランガは間髪入れず、何発も立て続けに鱗を尻に振り下ろした。
「ぎゃっ!……」
——ほら、イヌならイヌらしく鳴いてみろよ?
「ぎゃあっ!……ぎゃっ! あっ! ぐっ!」
——イヌヌワン! イヌヌワン! って、な!
 形容しがたい痛苦に、コライドンはいよいよ耐え難くなって、地べたに顔を擦り付けようとしたが、胸袋が邪魔をして地面スレスレのところで口吻は掠め、打ち振った顔面は虚しく宙を切る。
 浮いた顔面からポタポタと涙がこぼれ落ちた。どうしてこんなことになってしまったのだろう。あの時、一時の心の迷いで間違った行動を取らなかったら、俺もジャラランガも、こんな思いをすることもなかったのに——だなどと、思っても遅いのだった。
 この痛みをあと何百発でも何千発でも、ジャラランガの気が済むまで受け入れるつもりでいた。そうしなければ、とても自分の過ちは償えないし、この場所で生きていくことは到底できないように思った。仕方がない、仕方がないんだ。
——よし、あと100回くらいやってやるかな。テメエなら、それでも足りねえかもしんねえなあ?
 今まで見せたことのない嗜虐的なジャラランガの口調に、コライドンはひどく胸が締め付けられる思いだった。ガブリアスに犯されている時とも違う、生きてきて抱いたことのない気持ちだった。

『辛抱する木に金はなる』第7話 wip(2)

 

オロちゃんです。

作業の「見える化」として今話は一塊できるごとにここでアップしようと思います。4ヶ月以上、待たせているので……

なお投稿時には細かいところ(誤字はじめ、ディテールとか)は修正すると思います。

 

以下、本文


 見上げると「タウン」でも屈指の真新しいビルディングが向こうに見えてくる。青空から降り注ぐ燦々たる日の光を受けて、壁全面がまるでエアームドの羽根のようにきらきらと光沢を放つ。
 ど真ん中に鎮座するごてごてとしたギルド本部をはじめ、不思議な建物には事欠かない「タウン」ではあるが、これもまた異彩を放っていると言ってもいいだろう。塔みたいな形こそしているが、まあ何とも形容しがたい見た目をしている。
 話によれば、こいつはミアレ第19号遺跡から出土した特徴的な塔の形をモチーフにしているとかいう。「タウン」のように円形の形をした街のちょうど中心部に聳え立っているその塔は、不思議なことに、まだミアレという街が栄えていた頃に突如として廃墟と化したのだという。なぜ塔だけが廃墟になったのか? 街は依然として繁栄を続けたのか? 考古学者たちのあいだでは議論の的なのだそうだ。
 そんな話はともかく、新築だというにもかかわらずまるで崩壊後の世界を思わせる、趣味の悪い……とまでは言い過ぎにしても独創が過ぎるこの建物にやって来たのにはもちろん訳がある。
 何を隠そう、ブロロロームとミミズズによるバカ営業部の尻拭いのためだった。そうなのだ! 例によって今号でも、あのバカどもはろくでもないへまを犯して顧客を激怒させてしまったわけだ!
 本来ならば営業のトラブルは営業自身が収めるべきなのだが、それはまっとうな企業の話。あのバカどもが火消しに行ったところで、間違って水じゃなくて油をかけるに決まっている。となると、俺がその役を担わされる羽目に陥るのは論理的に当然の帰結ではあった。……それにしても、ではあるが。
 編集長の持って回った言葉を、ギルガルドが丁寧に噛み砕いて俺に説明してくれたところによれば、事の次第はこうだった。
 この頃「タウン」で評判になりつつある小説家に、新刊の広告を「お得の掲示板」に載せてほしいとかそういうお願いをするっていう話になったのだ……ちょっと説明が要るだろう。ニンゲンの遺した文化がポケモンのあいだで広まるにつれて、その仕事の真似を始める奴が出てくるようになった。その中でも秀でた連中は、その真似事でポケを稼ぐことができるようになった(おそらく、かつてニンゲンたちの世界でもそうであったように)。小説家ってのも、そうした職業の一つってわけなのだ。
 ブロロロームかミミズズがゆびをふるをしているうちに思いついたのか、はたまたジジーロン編集長の浅知恵によるものなのか、ともかく「お得の掲示板」の販路拡大の一環として、このような成り上がりのポケモンたちに狙いを定めようとした。その発想自体は別に責めるところじゃない。まあ、アイデアそのものはわりかし真っ当だとは思う。
 だが、いかんせんあのバカ営業どもに、そんな重大な商談などできるわけもなかった。意気軒昂と、まるでパレードにでも繰り出すかのようなテンションで営業に向かったブロロロームとミミズズが、数時間後、見事に全身をこんがりと焼いて帰ってくるまでを俺は見届けていた。それだけならこいつらがへまを犯したってだけで笑い話になるから良かったものの、この馬鹿ども、よっぽど不味いことを相手に向かって言ったらしい。後日、その小説家から、とてつもないお怒りの電話がかかってきたんである。偶然電話を受けてしまったギルガルドは珍しく狼狽えていた。電話を代わった俺も、受話器越しに伝わる怒りによって、俺の葉に火が燃え移ってしまいそうに錯覚した……
 まるで怒りで正気を失ったギャラドスを総出で抑えにかかるような有様だったが、どうにかこうにか、後程社の者が直々に挨拶に上がって非を詫びに参上します!……という形でその場は収めた。そうは言うものの、誰が直々に挨拶に上がって非を詫びるのか? となったら、結論は鼻から決まっているようなもんだったのだ。
「本当は私も行くべきところなのかもしれないんだけどもね……」
 ジジーロン編集長がいかにも申し訳なさそうに言うものだから、下っ端として無下に拒否することもできない。かといって、後輩のギルガルドに押し付けるというのも違う……結局、議論するまでもないことなのだった、俺が火中の“栗”を拾うってことは。ちなみに“栗”ってのはカゴのみの古い呼び方だそうだ。別の言い方では“マロン”ってのもあって、そいつはハリマロンって種族名に名残がある……そんなニンゲン時代の雑学を披歴してちょくちょく現実から目を逸らしていないとやってられない。
「……オーロット君、いい顔立ちしてるんだから、先方も信用してくれるんじゃないかね」
 ジジーロン編集長は励まそうとするが、まあ方便みたいなもんだってのはわかりきってた。馬鹿な営業部が向かったところで事態が収まる見込みは、ニンゲン時代の辞書に記された慣用句で言うならば「ダンバルが大人しくモンスターボールに収まるようなもの」だ……いや、多分それ以下かもな。
 俺はしばし立ち止まって、これから向かわなければならないビルディングをぼんやりと見上げていた。
 俺に課された使命は、何が何でもその小説家の怒りを収めて、お互いにいい落とし所を探ることだった。しくじれば、「お得な掲示板」に擬態して細々と銭を稼いできた弊社にとって死活問題になる。それは即ち俺自身の危機でもあるのだった。ここまで3年ほどどうにかこうにか持ち堪えてきたが、もし職場がだいばくはつしたら? 次の職にありつくまで、俺は一体どうしたらいい? 
——もちろん、僕がオロちゃんのこと支えてあげるよぉ!
 なんか変な声が再生された気がするが、あんな贋金づくりに頼ってなんかいられない。一刻も早く、どこかにお帰り願って、俺は俺自身のことに対処しなくちゃならないんだ……最悪の場合には。
「ふう」
 ひとまずこれを嫌うやつはいないだろうという極めて無難なポフィンを道中で購入し、その上で先方の元に向かおうという俺だったが、情けないことに、訪問前だってのに動悸が止まらない。動悸っていうのは変かもしれないが、ソウルがとくとくと変な音を鳴らしている感じ。できるものなら、こういう仕事はしたくないのに。他者と面付き合わせて話すのは死ぬほど苦手なのだんだ。逃げ出したくなるほどには。
 空には鳥ポケモンたちが秩序正しく飛び交っている。荷物を運ぶペリッパーオニドリルや、空飛ぶタクシーを運行するアーマーガアやエアームドなんかも見える。目には見えないけれども「タウン」上空にも空路というものが存在していて、ここは東方向に一方通行、あっちは西方向、そっちは北か南で、みたいな規則がきっちり整っているのだった。もちろんスピード規制だってあるので、カイリューガブリアスといえども全速力で飛ばすことは許されない。それはそれとして、地に根を張る樹木として育った俺からすれば、ぼんやりとした憧れを感じる。こんな嫌な仕事を押し付けられてる時はなおさら。
「あれー?」
 背後から嫌な声がした。……俺は動きを一瞬止めた。
「おーい!」
 誰かが誰かにそう呼びかけている。まあ、俺には関係のないこと……なのに、どうして俺の根は凍りついたまま動かないのか。
「やっほー!」
 声はどんどん大きくなっていく。それどころかみるみるうちに俺のそばに近づいている。振り向いたら駄目だ。こちらから反応しては駄目だ。なぜったら、この声なんて知らない、俺は、知らないんだ……
「オ〜ロちゃんっ!!」
「ぐわあああああっ!」
 とうとう、俺はその声の主に捕まってしまった。そいつは後ろから俺にぎゅっと抱きついて、まるでネッコアラが枕木にしがみつくように、しっかりとまとわりついて離れようとしない。
「こんなとこで会うなんて奇遇〜! 何してたのオロちゃん!」
 できるものなら俺はこいつのことを無視して、その場を立ち去りたかった! しかしこいつの腕といったら! オクタンみたいな吸盤でも付いてんのかってくらい、ぺっとりと俺の木肌にくっついて剥がれない。それに、道ゆく人の目線も痛かった。抵抗すればするほど、騒ぎが大きくなってしまうのは目に見えていたし、そうなると悪いのは一方的に俺ってことになっちまう。
「お、お前! 何でこんなところにっ!……」
「そりゃあ、お散歩してたら偶然オロちゃんのこと見かけちゃったから! なんだか深刻な顔してるけど、だいじょーぶ?」
「う、うるさい! 別にっ、お前に心配される筋合いなんか……ないっ!」
「本当?」
「本当だから、こっから立ち去れ、とっとと! 迷惑だ……!」
「どーして?」
「『どーして?』も何もあるかあっ!」 
 サーフゴーめ、訊くたびいちいち首傾げんなっ、鬱陶しい。まったく、どうしてこいつは俺にとって一番嫌なタイミングで、それこそ「よりにもよって」なタイミングで現れやがるんだろう? これならまだ部屋でしつこく絡まれている方が、遥かに、遥かにましだった! 部屋の中ならぎりぎり耐えられもしようが、街中でもこいつに付きまとわれていたら、俺はどこに安らぎを見出しゃいい?
「いーじゃん、せっかくなんだからさっ」
「何がどう、『せっかく』なんだ……!」
「もう、いちいち怒らないでって!」
 いきり立つ俺の角を両手でぷにぷにといじるサーフゴー。宥めてるつもりか。
 ただでさえ落ち着かないってのにサーフゴーに不意打ちまでくらって、腹立たしいとか業腹だとかむかつくだとか言葉をいくら積み重ねても、俺の感情はとても表現できやしなかった。
「満足したか? だったら、今すぐ俺のそばから」
「オロちゃん、今からどこ行くの?」
「……お前には関係、ない」
 次、お前がどんな反応するかはわかってる。「どーして?」ってアホ面しながら聞いてくるんだろ、どうせ。
「どーして?」
「……くっ」
 何というか、いざ当たっちまうとすごく小っ恥ずかしくなってくる。ガキの頃に書いたしょっぱいポエムの一節をふと思い出してしまったみたいないたたまれなさだった。サーフゴーの行動なんて、覚える必要もメリットも一切ないのに、俺はなんだかんだ覚えちまってる。いや、覚えこまされてるって言った方がいいのか。興味なけりゃ、忘れりゃいいものを、どうして俺ってやつはこうなんだ。
「い、いいから、とっとと失せろ! 俺はお前の友達でも、ましてやパートナーでもないんだからな!」
「でもちょっとだけなら良いでしょー! てか、僕も、ちょっとこの辺に用があるんだ!」
「……お前の用なんか聞いてない。俺には関係ない話だからな」
「あるもん!」
「……は?」
「むしろ、いまオロちゃんがいてくれて丁度よかったってくらい!」
「何が」
「これからオロちゃんのためにぃ、またお買い物しようと思ってたの! これからそれを見に行くんだけどねっ、オロちゃんが一緒なら、気に入ったものもすぐに選べるし、いいかなーと思うの!」
「……」
 俺はすたすたと歩くスピードを速めた。くだらん。とことん、くだらねぇ!
 サーフゴーはなおも横をついてくる。向かい側から歩いてくるポケモンたちを惰性でかわしながら、俺は前だけを見るようにしていた。逆に吹っ切れた。こいつにまとわりつかれる不幸に比べたら、どんな面倒な仕事も耐えられる。
「オロちゃーん?」
「……」
「待ってよ、オロちゃん!」
 ……鬱陶しいな、本当に。俺の態度を見ても、わからないのか?
 俺は全力で早歩きしていたのだが、サーフゴーはいとも簡単についてくる。ちらりと横を見ると、例の黄金でできたサーフボードに乗っていやがった。
「おい、そんなもんに乗ってたら、危ないだろ」
「大丈夫! いきなりぶっ飛ばしてくるギャロップとかもいるし、それに比べたらへーき、でしょ?」
 ……まあまあ正論なので、俺は反駁することができなかった。いや、そんなことは別に問題じゃなかった。俺はすっかり機嫌を損ねていた。頭の中では、一刻も早くこの贋金づくりを保安官に突き出す手筈を捏ね初めていた。
「あ!」
 いきなり、サーフゴーが叫んだ。
「そこそこ! 僕、そこに用があるの!」
「……へ?」
 サーフゴーが指差したのは、何を隠そう、まさに俺が今から向かおうとしているビルディングだった。念のため周囲を確認したが、他に指差せそうなほど高い建物は存在しない。
 俺は呆気に取られて、サーフゴーの得意げな顔を呆然と見ている。まるで、ヌケニンの背中の洞を覗き込むかのように。
「……どうして」
 俺は思わず「あっ」なんて口をついて出てしまった。何せ、今度は俺が「どーして?」と言う番になっちまったから。
「それはねー、着いてからのお楽しみ!」
「お前って、本当に鬱陶しい奴だな!……」
 そんな俺の苛立ちをよそに、サーフゴーはにっこりと微笑んで見せた。何もわかっていないのか、全てをわかったうえで笑っているのか、よくわからないところも、むかつく。

『辛抱する木に金はなる』第7話 wip

 

オロちゃんです。

先月上げた草稿は破棄しました。サーフゴーがおらずオロちゃん単独行動になる話ってのは、第5話でもやってるし、同じことを延々繰り返していたら話もろくに進まないし、自分でも何を書いてるんだろうという気がしたため……

 

私事ですが、今月からまたぼちぼち働き出しています。長い夏休みだった。

だから仕事の合間とか、帰ってきてから寝るまでの僅かな時間とかでちまちま書いているわけですが、その方がかえって作業が進みますね。まとまった時間はなかなか取れない代わりに、チリも積もれば、ウサギとカメ。

話の筋も考え直して、これならいけるかなーってのは思いついたので、まずは月内に7話上げられるよう努めます。まあ、他にも書かないといけないもんがあるし、ZAもエアライダーも獣文連もあって、個人誌もそのうち出したいってなったらやること多くて、ああ大変だあ!

 

——以下、第7話冒頭部草稿

 

 俺が立っていたのは、通りの角にひっそり佇む古本屋の前だった。「タウン」が形成されたばかりの面影を色濃く残したレンガ造りの小ぶりな建物。
 ここは「タウン」にやってきた当初、よく世話になっていた店。
 ……ここいらに来るのも久々、だな。
 記憶を遡れば、俺がまだ考古学者を目指して勉学に励んでいた時期に重なる。初めは受験のために必要な文献を安く手に入れるために訪れていたが、ニンゲン時代の言語を初歩的な段階ではあるが読み解けるようになってからは、都度興味を持った古書を片っ端から買い漁っていたものだ。もっとも、今やその多くは本棚にぎゅうぎゅう詰めになって、埃さえ被っているわけだが。
 思えば、この古本屋の存在を知ったのが「お得な掲示板」からだったのは何かの因果だろうか……正確には一文字違いではあるが。正直なことを告白すれば、必死に「タウン」の求人を当たっていた折りにそれを目にした時、俺は本気で勘違いをしていたのだ。「お得な」と「お得の」と。何やかやがあって憔悴しきっていた俺は、わずかな助詞の違いにさえ気づかなかい始末だった。
 店の周辺はひっそりとしている。別に人気がないってわけじゃないのだが、この古本屋はしんぴのまもりでもしているかのような、どこか常人を寄せ付けない空気をまとっている。この空気感も昔から変わらないものだ。
 別に目的があってここに来たわけじゃない。今となっては俺がこの古書店に足を運ぶ理由なんてどこにもない。たまたま、この近くに仕事の用事があったから根を運んだまでのことだ。第一、今日は外の用事が随分とあって、おちおち休んでいる暇もないくらいなのだ。こんなところでいちいち昔を懐かしがっている場合なんかじゃなかった。
「………………」
 しかし、素通りしようとしてもできない俺がいた。その店の前でまるでかげふみされてしまったかのように、一歩も前へ進むことができないって状態だった。俺のそばをそそくさと通り過ぎていくデデンネは、不思議そうに俺を見上げていた。
 クソっ、グズグズしていたら何もかも中途半端になってしまうぞ、オーロット。まあ、飯の時間を省けば、割けない時間でもないだろ。
 そう言い聞かせつつも、店内に根を踏み入れるまでしばし躊躇してしまっていた。俺みたいなやつが、今さらこんな店に入っていいんだろうか? 別に誰も俺のことなんか見ていないとわかっているのに、やけに人目が気になってしまう。飢えた雄どもが屯す裏通りには平然と通うようになっているくせに、おかしなことだと自分を笑う。
 ようやっと、店の中に入る。少し薄暗い店内は、電力に関しては何ら困ることのない「タウン」にあっては異様だが、おそらくは本が焼けないようにするためなのだろう。それほど広くない空間をさらに小さく区切っている本棚にしても今どきなら新しくスマートなものはたくさんあるが、店主の趣味なのだろう、素朴な木製のものが使われている。
「……」
 店主のアバゴーラもちっとも変わらずに、カウンターで頬杖をつきながら浩瀚な書物を広げている。常にどこか不機嫌そうに顔を顰めている顔つきも変わらない。
 ほとんど常連のようにここを訪れていた時も、ほとんど言葉を交わした記憶がない。狭いカウンターにその大きなガタイを嵌め込むように陣取って平然としながら、ずっと何かしらの本を広げている。誰かが店に入ってきても、一瞬ちらりと見遣るだけで、すぐに目線を本に戻してしまう。そっけないと言えば、そっけない。
 そういうわけで、古本屋を覆う空気はとても静かで、どこか現世離れしているようにも感じられた。なんだか、店の周囲にはヒトモシの群れでも住み着いていて、じわじわとこの空間から生気を吸い取っているかのような……
 それにしても。一室に並べられた本棚に、ありとあらゆる古書がぎっしりと整列している光景は、何というか、やっぱりうっとりとさせられてしまう。そのどれもが、かつてこの世界にいたニンゲンたちが考え、想像力を膨らませた確かな痕跡だと思うと、心揺さぶられるものがあった。数年間、忘れていたというよりは記憶の底に封じ込めてきた光景だった。
 ふと目についた本に、俺は自ずから手を伸ばしていた。背表紙はボロボロになって文字は掠れていたが、全体から受ける印象でしっかりと覚えていた。『ニンゲン全史』。ボクレーだった頃の俺にカメックスの爺ちゃんが読み聞かせてくれた本だった。間違いない。
 その本を手に取って、ぱらぱらとページをめくってみるだけでも俺はたくさんの思い出を呼び起こすことができた。ところどころに挟まれた挿絵もよく覚えていた。爺さんはよくこの挿絵を指さしながら、まだ幼かった俺に本の言わんとすることを身振り手振り交えて教えようとしてくれたんだ。
——まあ全部知り合いの考古学者の受け売りだから、読んでる俺もよくわかってないんだがな! がっはっは!
 なんて、よく笑っていたものだが、そこで教えられたことによって、俺は「タウン」に行って勉強して、そして……という夢を抱いたのだった。
 だから、この本は俺にとって運命の書であり、呪いの書でもある。
 カメックス爺さんとの思い出自体は、今でも俺にとって綺麗で美しいものだ。それを美しいと思うことを疾しいと思ってしまう俺の心は、大嫌いだった。
「……どうするか、な」
 本の書影を眺めながら、誰にも聞こえない声量で独言ちる。買ったところで、今更読むこともないとは思いつつ、このまま立ち去るのは後ろ髪を引かれるような——といっても俺に後ろ髪はないんだが——気持ちだった。裏の見返しをチェックする。安くはないが、別に買えないこともない金額だった、俺の経済力からすれば(もちろん、サーフゴーめが不正に得ている金のことは一切考えないものとする)。
 ちらりとカウンターの方を見る。アバゴーラは相変わらず仏頂面で分厚い本に目線を落としている。同じカメの種族だからか、アバゴーラのことを見ていると余計にカメックスの爺ちゃんのことを思い出してしまう。ここによく通っていたころにはそんなこと思うことなんてなかったのだが。ここに爺ちゃんがいるわけでもないのに、なんだか申し訳ない気分になってきた。
 これは爺ちゃんに対するせめてもの感謝、謝罪、お布施(?)だ……なんて理屈を捏ねながら、俺は『ニンゲン全史』をカウンターへ持って行った。アバゴーラは読んでいる本に突然影が差したのに気づいて、鬱陶しげに俺の方を見上げた。
「うむ」
 本を受け取ったアバゴーラは、目を凝らしながら値段を確かめた。俺はあらかじめその値段分のポケを出しておく。
「カバーは」
「あっ……お願いします」
「うむ」
 アバゴーラはしばし俯いて、机の下にしまってあるカバーを取り出した。それから慣れた手つきで『ニンゲン全史』にカバーをつける。
「ニンゲンってのは、どうしていなくなっちまったんだろうな?」
「へっ?」
 出し抜けにアバゴーラは言った。それが俺に向けられた言葉だということに気づくのが少し遅れて、俺は居眠りをした学生が先生から急に質問された時のように、不自然なほどにビクッとしてしまった。
 どう答えればいいのかわからずに、おどおどしているのに構わず、アバゴーラは話を続ける。
「ニンゲンが残した本はそれこそ山のようにある。だったら、どうして奴らがいなくなっちまったのかについても、示唆するような本があるに違いない。しかし、考古学者どもが血眼になって遺跡を探し回っても、現存する本のなかで最近のもんは西暦——ニンゲンたちが使ってた暦のことだな——そいつで言う2200年ごろ。それ以降はぷつりと記録が途切れちまってる。何故だと思う?」
「それは……」
 咄嗟に俺は考えを巡らす。こう言う時、考古学者ならしっかりと自分の考えを展開させることができるんだろう。ここで言い淀んでしまって、何も言えない俺は所詮そういうタマじゃなかったってことか、なんて自虐もしちまう。
 アバゴーラは黙って俺のことを見据えている。どんな答えであろうが、それを辛抱強く待っているかのようだった。面接の時の心地悪さを思い出さずにはいられなかったが、別にこれは試験でも何でもない。
「……ニンゲンは高度な技術と豊かな文化を持っていたんだろう、と思います」
 恐る恐る俺は口に出してみた。
「それは……今の『タウン』に普及してる技術を見れば十分にわかります。おそらくは共生していたであろうポケモンたちの力も借りて、当時は今のポケモンたちが想像するよりも遥かに繁栄していたんだろうなと思います。それがどうして僅かな痕跡だけ残して綺麗さっぱり消えてしまったのか……ええと……」
 アバゴーラはなおも黙って俺の話を聞いている。俺たち以外には誰もいない古書店は、伝説上のポケモンが封印されている場所みたいな静けさだった。
「ニンゲンたちの中で、何かおかしなことが起こったんじゃないかなあ……とか、そんなことを考えています。理由は今のところほとんどわからないですが、とにかく何らかの原因があって争い……が起きて、それが長引いているうちに、みんなおかしくなってしまった。それがどういうことかと言えば……ええと……そうだな……例えば、これはまったくの想像ですけど……」
 まるで未知の絵を鑑賞するかのように俺の目線は、アバゴーラの仮面を嵌めたような顔立ち、鎧のように全身を覆う鈍色の甲羅、薄暗い店の中だと一層と映えてみえるダークブルーの体へと移って落ち着かない。そうしながら、俺は何とか頭の中でもくもくと浮かび上がっている観念を言葉にしようと頑張っていた。
「ある時、ニンゲンのあいだで価値観の転倒が起こった。それがニンゲン自身のものなのか、ポケモンの介入があってのことなのかは研究が進まなければわからないとは思うんですが……何ていうか、具体的に言えば、生き延びるためだったら死んでも構わない、みたいなへんてこな感じになってしまったと言いますか……別にこれといった根拠はないんですが……」
 俺の思考はそこで止まった。言葉も突然出てこなくなった。
 俺が語ったことのイメージは専ら、俺が見てきた悪夢で醸成したイメージによっていた。といっても、今の仮説(とも言い難いもの)は、論理的にはあやふやだし、根拠も薄弱だし、論述としてはとても褒められたもんじゃないかもしれない……
「なるほど」
 ゆっくりと頷きながら、アバゴーラはぐっと伸びをした。
「当然だが、答えが出てねえことに答えることは難しいもんだ。まあ、わからねえもんはわからねえなりにもがこうとすることは、悪いことじゃねえな」
 俺は小声でつい「すみません」なんて子供みたいに返事していた。その返事はたぶんアバゴーラには聞こえていない。
「で、お前さんは、どこから来た?」
「え?」
 質問の意図がよく掴めず、俺はおかしな態度を取ってしまう。アバゴーラは相変わらずの仏頂面で俺の様子を観察し、なかなか答えが出ないのを見ると、痺れを切らしたかのように、
「どの地区の者だって、聞いてる」
「……わいわい地区の者です」
 アバゴーラ得も言われぬ圧に押されて、つい答えてしまった俺。
「仕事は?」
「……まあ、出版的なことを」
「儲かってるか?」
「そう言われると……そこそこ、ってとこですかね」
  それにしても、アバゴーラはなんで俺のことについていちいち尋ねてくるんだ? それがあなたに何の関係があるんだ? みたいに、図々しくても正面切って言うべきなんだろうが、それができない俺のひ弱さ。あと、「そこそこ」なんて言ったが「お得の掲示板」社は薄給だ。
「ふうむ」
 馴れ馴れしいカブトプスにまんまと騙されたことがあったために、俺は、思えばアバゴーラという種族もカセキだったななんてことを考えてしまった。もちろん、カセキだからといってそういう偏見を持つのはよろしくない。だって、そんなことは今の話には何一つとして関係がないのだ。
「そうか」
 アバゴーラはそれだけ言ってまた頬杖をついて、何やら億劫そうに片方の鰭を扇のようのぱたぱたとさせた。
「……最後に来てから、随分ご無沙汰してたようだが」
「え、覚えていたんですか」
 認知されていたことは、正直言って驚きなのだった。アバゴーラはどちらかといえば、来る客に対しては無関心な態度を貫いていたから、てっきりろくに覚えていないもんだと思い込んでいた。
「ふん。こんな辺鄙な店に来るオーロットなんて、忘れることはねえ」
「けど、どうして……」
「知るか」
「えっ……」
 アバゴーラはぴしゃりと言い、それっきりだんまりしてしまった。どうもそれに対しては答える気はないらしい。そんなぶっきらぼうな返しをされたら、俺としても何とも言いようがないのであるが……
「おどおどするな。俺はな、そういう奴を見てると苛々しちまう性分だから」
「あっ……す、すみません」
 へこへこと謝る俺にアバゴーラはとうにカバーに包み終わっていた本を黙って差し出した。
「基本的に商売上がったりなもんでな。暇だったら、また来い。……別にまけはしないが」
「あ、はい……」