なぜかガラル転生したコライドンだけど、イケメンなのですべて何とかなった 34話

 

余談。今日(昨日)、日比谷でミライドンを見物してきました。コライドン派の自分でもつい見入ってしまう再現度の高さに1時間くらい現地に釘付けになってました。それでミライドンを出したわけではないですが、描写の解像度なるものは確かに上がりますね……

 

 34

 

「もっと腹から声出したらどうなんだよ?」
 ガブリアスはみくびったように、ジャラランガに向かって言った。
「こそこそこそこそ一体何しに来たんだよ? 俺たちのセックス見てオナニーか? へっ、テメエらしいな!」
「ざけんな」
 風に揺れたジャラランガの黄金色の鱗が透き通った音を鳴らした。聞き慣れた音だ。そのはずなのに、いま、この状況で耳にするとまるで現実感を感じられなかった。肝が冷え、全身が萎縮したが、それで尻が引き締まると既に奥まで挿入されているガブリアスの立派な雄の威圧的な形を感じてしまう。痛みと気持ちのよさと、区別のできない感覚がたちまち尻の奥から込み上げてくる。
「うっ……」
 突飛な叫び声を挙げてしまったコライドンの逆三角形の背中を、ガブリアスの爪がねっとりと這う。口元は緩んで、薄笑いを浮かべていた。ジャラランガの存在など少しも気に留めず、むしろ堂々と見せつけるように、メリハリつけて引いた腰をコライドンへと打ちつけた。
「ああっ……! くっ、くうっ……!」
「で、要件あんなら簡潔にしてくんねえかな?(ガブリアスは小気味の良いテンポで腰を振り続ける。それに呼応するようにコライドンの悶絶がワイルドエリアに響く)。見ての通り俺たち忙しいんだよ!」
 ジャラランガは決然として拳を打ち鳴らす。鱗の擦れ合う澄み切った音が、冷水で顔を洗うかのように、辺りの空気を引き締めた。
「嫌がってんだろ、離せよ……」
「嫌がってるぅ?!」
 宝石の山を見つけたガバイトのように殊更に目を丸くしてジャラランガの言葉を復唱した。
「嫌がってるどころか、コイツは自分から俺にケツ差し出してきたんだけどな?」
「テメエが無理やりそうさせたんだろうが」
「心外だぜ。テメエはいつだって正義面ばっかするよなあ、頭空っぽのくせに?」
 ユキハミの這う速度で腰を引き、二匹の混ざり合った体液がくちゃくちゃと音を立てるのをウンザリするほど見せつけると、コライドンと繋がったペニスの先端が見えるか見えないかのところで動きを止め、接合部を自慢げに爪で差し示した。そこから既に漏れ出した粘体が糸を引いている。
「ほら、ここ、抜きどころだぜ? なあ!」
「黙れ」
「んだよ、つまんねえヤツ」
 蔑むように大袈裟に鼻から息を吹き出して、ガブリアスは釘を打つように勢いよく巨大な男根をコライドンの中に沈めた。ジャラランガが睨みつけるのも構わず、見せつけるようにコライドンを犯した。
「ああ゛っ!……いっ……!」
「おいコラ、テメエ!」
「なんだよ?」
「とにかく、今すぐこんな馬鹿げたことやめ」
「ああああああ゛っ!……」
 ジャラランガは意を決して叫びを挙げたが、同時に上がったコライドンの悶絶に気圧されてしまった。極悪な大きさと形をした肉棒をいきなり尻に挿れられるなど、拷問を受けるに等しい苦しみだった。もう少しで内臓が弾け、筋肉が千切れ、骨が砕け、それらがまとめて破れた鱗から漏れ出してしまう、と本気で感じる程だった。それなのに、雷光から少し遅れて轟音が鳴り響くように、苦悶は何とも言えない感覚に上書きされる。一体それがどういう感覚なのか、吟味する間もなくガブリアスの肉棒がまたぐりぐりと尻の最奥部にねじ込まれ、腹臓から再び苦悶が漏れ出る。それはとても耐え難い感覚である気がする。けれども、その一方で初めて食べる料理に対して美味いとも不味いとも言い難いまま、つい箸が進んでしまうのと同じで、端的に言ってコライドンはこの感覚に病み付きになってしまっていた。
 こんなことをされに来たわけじゃないんだ、という思いとは裏腹に、苦しいはずなのに股間の逸物はいっそう元気にそそり勃ってしまっていた。ガブリアスの下半身に弾かれて、コライドンのカラダが前後してしまうのに合わせて膨れ上がったペニスが揺らめくのは、まるで地震が起きて、不安定な家具が好き勝手のたうち回るのにも似ていた。この期に及んで、その野生的な外見に似合わず、まだ理性にしがみつこうとしているコライドンを揶揄うように、べち、べち、と喉袋を打つ。
「ぅおおっ……! く……くっそ……! んんんんんんんんん゛っ……!」
 牙を食いしばって堪えようとしても、荒くなる息は止めようがなく、幼児のように口から唾液が溢れかえってきた。ガタイの良い一端の雄が昂った情欲のままに乱れかかっている姿を、しかもよりにもよってジャラランガの目の前で晒してしまうとは。これまで決して彼には見せなかった、コライドン自身もついさっきまでこんなことになるとは思いがけなかった姿体を見せつけてしまっていることに対して、どう足掻いても適切な言葉は出てこなかった。
「どうだ? これ見てもそう思うか?」
 侮るように、肘から生えた鰭を仰ぐように動かしながら、コライドンの尻をリズムよく打った。軽い力の割に、その音はワイルドエリアの冴えた空気に一際澄んで響いた。
「ざけんな!……」
 とうとう耐えきれなくなったジャラランガが、拳を強く打ち鳴らした。コライドンのヤツを嬲るのに熱心でまるで無防備なガブリアスに、渾身のソウルビートをぶつけてやろうと、全身の鱗をしゃかりきに鳴らして、勢いのまま突撃しようとした。
「いけませんヨ」
 不意に、何かがジャラランガの背後から鷹揚に語りかけた。誰かを問う暇もなく、ジャラランガは何かに腕をキツく取り押さえられた。
「せっかくのお楽しみに水を差しテハ無粋だと思いませんカ」
 驚いて振り返ると、まるで見たことのないポケモンがそこにいた。ジャラランガの目に何よりも先に焼きついたのは、青々とした光を放つ瞳だった。しかし、それは瞳というよりは、いつかどこかで見たデジタルスクリーンに映し出された電光の集合体を彷彿とさせた。訝しむジャラランガを落ち着かせるように、そいつはジャラランガを見据える。
「ゴ心配なく。ワタシは決しテ怪しいモノではありませんカラ」
 いかにも怪しいことを言う。目付きも、表情も全く変わらなかったが、ジャラランガが見上げた角度からすれば、古い時代の肖像画に描かれた人のように微かに微笑みかけているように見えた。
「何なんだよ、テメエは……」
 渾身の力を込めてそいつから振り切ろうとしても、押さえつけられた腕はびくともしなかった。まるでグラードンに腕を握られてでもいるかのような圧倒的な力に、虚しくも抗うことしかできなかった。
「ソレを答えるのにヤブサカではありませんネ」
 およそ似ても似つかないはずなのに、メタリックな顔立ちはどことなくコライドンを思わせ、ゆったりとしたS字状を描く胴体と一体化した喉元の形も、コライドンの喉袋とよく似ていた。けど、だからどうしたってんだ? つうか、何が一体どうなってんだよ? ジャラランガはひどく混乱するばかりだった。
「えエと……強いて言えバ、コライドンサンの遠いハラカラとでも申しまショウか」
「ハラカラ?」
「時間も空間も遠ク隔たってハいまスガ、私とコライドンサンは繋がっているのですネ」
「何言ってんのか、さっぱりわかんねえ……」
「へっ、テメエみてえな馬鹿にはわかんねえだろうなあ……!」
 陰謀を信じる連中が信じない連中を無知だと決めつけるように、ガブリアスは嘲笑する。その間にも機敏に腰を振り、革張りのソファーのようにふっくらと割れた腹筋の陰影を浮かび上がらせながら、自分のチンポをコライドンに注射し続けている。俺が目の前にいながら、ガブリアスのヤツが身構えもせず余裕綽々と交尾に耽っていられるのは、そういうワケだったのか、とジャラランガは理解する。そうだとしても、相変わらず何もわからなかった。
「何なんだよ、コイツは?」
「テメエがコイツとつるんでるのと同じことだろ、なあ?」
「その通りかと思われマス。私、ミライドンと言います。今後ともよろしくお願い致しマスね、ジャラランガサン!……」
「うううううううううう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぐぅっ!……」
 ただ一匹、コライドンは、手厳しい雄根の攻めに音をあげそうになるのをギリギリのところで堪えていた。