PKMN×PKMN小説を求めて(5/?)

 「PKMNのエロ小説」に投稿された『ピカチュウ♂×イーブイ♀』をきっかけとして、現在の「PKMN小説wiki」が形成されていったことは前に書いた。
 そのSSがネット上に発表されたのが2007年5月4日〜7月1日にかけてであり、『ポケダン時・闇』の数ヶ月前には、「PKMN×PKMN小説」の土壌が出来上がっていたことは、特筆すべきであるし、『ピカチュウ♂×イーブイ♀』、作者の333氏のよる正式なタイトルは『ピカチュウイーブイ』、がPKMN小説における金字塔であることは疑うべくもない。ということで、今作が現在でもアクセスが容易な「PKMN×PKMN小説」としては最古であり、かつ、現在に至るまでのPKMN小説の(腐的な表現を使えば)「原点にして頂点」である、と言って差し支えないと思う。
 しかしながら、現存最古、となるとまだ探求のしようがあった。きっかけは、ポケモンエロパロ板(「PKMN同士総合スレ」ではなく、『ポケットモンスター』全般のエロパロを扱ったスレ『ポケモン』の方。スレ立ては2001年12月23日)のとある書き込みだった。

 

60名前:名無しさソ@ピンキー投稿日:02/08/22 13:30 ID:f/fV63pr
ポケ×ポケの小説は携帯版のラブホスレに……
(出典:「ポケモン」レス番号60 http://eroparolog.x.fc2.com/log/pokemon01.html

 

 これだけだと何のことかわからなかったのであるが、2014年以降、2chの過去ログは無料で閲覧できるようになっていたため、『ログ速』(https://www.logsoku.com/search)で「ポケモン ラブホ」で検索してみたところ、問題のスレを発見したわけである。
 『ポケモンラブホテル[R15]』。
 スレタイからはどういう趣旨のスレか、想像しにくいと思われる。レスを確認する限りでも、スレの趣旨ははっきりとしないのであるが。当時別に存在したポケモン系のエロスレから分離、ないし隔離されたものであるらしい。

 

1:支配人:2001/03/04(日)23:43
 ポケモン愛のスレッドです、
 当然人間もポケモンのOK!
 はい!お一人様ご案内〜
 ps:一応[R-15]つけときます、

 

 エロスレとの違いについては、スレ主はこう書き込んでいる。

 

4:支配人:2001/03/05(月)00:09
 あちらはサイト張りですが
 こちらはお客様に楽しんでいただくスレッドです

 

 メインのエロスレは、他サイトへのリンクばかり張られているが、ここはスレ内で純粋にポケモンを積極的に愛でたり、エロを見物しようという場ということで、「ラブホテル」というシチュエーションが考えられたものらしい。ちなみに、2号店(2スレ目)以降のテンプレだと、その趣旨は明確になっている。

 

1:2代目支配人:02/05/06 01:17
 ポケモン愛のスレッド2号店ついにオープン。
 ポケモンを愛でるもよし、営みに見入るもよし。
 禁断の恋をしたあぶない人達のスレッドです。
 正常な精神を持った方々に迷惑をかけないよう
 是非ともsage進行にご協力お願いします。
(出典:「ポケモンラブホテル2号店[R-15]」レス番号1 https://game.5ch.net/test/read.cgi/poke/1020615465/

 

 「禁断の恋」という古めかしい常套句に含まれるニュアンスはさまざまである。そこにはポケモンそのものに対するエロも含めた愛情だとか、今では誰もが当たり前に、日々SNS上で吐露しているものが現れているのだが、当時そういうものはこういう辺境的なスレで密かに語られるものだった。
 「ラブホテル」というシチュエーション自体は、同時期に存在したなりきりスレの流れを汲んだものではないかと思われる。同スレでも「イーブイカフェ」とか「ピジョンスレ」などへの言及がある。スレ主が特定のポケモンになりきって、スレ住民と交流する性質のものであり、「ラブホテル」スレでも当初はスレ主である「支配人」なる人物が取り仕切っている。
 この「ラブホテル」という設定だが、「ラブホ」という空間は、アダルトで妖しい印象が一般的に持たれていた。レス中にも、ラブホテルを風俗の一種と混同するレスも見られる。通常のホテルと比較して安価な上に内装も豪勢で各種サービスも充実しているところに目をつけて、女子会やオフ会に利用されるようになるのは、随分先の話だし、「ラブホ」は当然、性行為の場として想定されている。
 さらに、第二の当然として「相手」が必要になっていく。開設当初にも「支配人」はこうレスしている。

 

9:支配人:2001/03/05(月)00:57
 [レス一部省略]
 こちらでお相手を待つこともできますので
 お相手を連れてなさらない場合は
 当ロビーでお待ちすることもできますので
 是非ご利用ください。

 

 性行為をするのであれば、当たり前だが相手が必要である。一人カラオケも、一人焼肉もない時代に、一人ラブホなんて論外である。ところが、「ラブホ」という設定のおかげで、「ポケモンラブホテルスレ」は思わぬ収穫を得ることになったのである。つまりは、偶然にも「PKMN×PKMN小説」を投稿するコミュニティが、ネット上におそらく初めて出現したのである。
 ちなみに、念のためtwitter上で「ポケモンラブホテル」と検索をかけてみたところ、言及している方が何人かおられた。おそらく自分よりも一回り、もしかしたら二回りのポケモナーなら、ある程度記憶されているのかもしれない。とはいえ、そこで享受されていた作品群は、過去ログを参照しなければ、読むことができない上、時間を置いて投稿された場合がほとんどで、今から読むには煩雑な面がある。ネット掲示板特有のライヴ感ゆえの難点である。
 繰り返すがこのスレが立ったのは2001年のことである。PKMN同士の小説コミュニティが発達したよりも6年早く、『ポケダン』の誕生よりも4年早く、PKMN同士を絡ませるという発想が存在し、しかもSSという形で実際に表現をしていたという事実があり、それが20年近く経った現在も削除されずに残っていたことは重要である。
 というわけで、今後しばらく「ポケモンラブホテルスレ」の盛衰を追いながら、忘れられた「PKMN×PKMN小説」を発掘・紹介していこうかと思っている。その中には、『ルビー・サファイア』発売前後のポケモン事情を考慮しても、目新しいカップリングや、完成度の高いものも含まれている、だろう。

出典:「ポケモンラブホテル[R-15]」 https://game.5ch.net/test/read.cgi/poke/983717029