なぜかガラル転生したコライドンだけど、イケメンなのですべて何とかなった 29話

標題通り!!!

 

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 こんなところに来るはずじゃなかったんだ、とコライドンは思った。ワイルドエリアはすっかり日が暮れて夜になっていた。ダークブルーに染まった空に煌めく月が浮かんでいた。ジャラランガが俺の帰りをやきもきして待っているであろうことは容易に想像できた。言葉面ではそんなこと微塵も気にしていないとは言うくせ、コライドンの身が他の誰かに貸し出されることに対して、不平を隠しきれていないのは明らかだった。多分、そういうことを考えまいとして胡座を掻いて瞑想をしようとして上手くいかず、苛立ち紛れに腕立て伏せを初めて見たり、目についた樹木に向かって拳をぶつけてみたり、不味そうにきのみを齧っていつまでも咀嚼している。
——……東側には絶っっっっっ対、近づくんじゃねえぞ
 とそのジャラランガが言っていたワイルドエリアの東側に、コライドンは歩を進めてしまっていた。しかも、一緒に歩いているのは他でもない——
「さっきのは傑作だったよ、な?」
 何の悪気もなくガブリアスは語りかけてくる。お茶目に牙を見せ、弾頭のような頭部を図々しくもコライドンの顔に寄せながら。顎から峻険な首筋を通って逞しい胸筋や腹筋を染める橙色の体色は暗闇でも派手に映る。
「前々から見知っちゃいたけど、アイツらのケツマンがあんなクソみてえな名器だとは思わなかったぜ」
 結果からしてみれば、コライドンは随分と盛ってしまったのである。初めは自分を慕うプテラオンバーンの可愛いげある姿に根負けして、セックスに付き合っているうちに、なんだか自分も本気になり出してしまった。ほっそりとして、筋肉質で均整の取れた彼らの体つきが、こんなにも雄の本能を掻き立ててしまうとは。滾るように勃起したペニスを二匹の尻に突き挿して俺もコイツらもまとめて気持ち良くなってやろう、などと考えもせずに考え、思いつく限りの行為をしてしまった。興奮が覚め、冷静に我が身を振り返ってみると恥ずかしいことばかりだ。
 その上に、思いがけず、ガブリアスが乱入してきたのだった。
「けどよお、テメエも大した淫乱野郎だったよ。あんな雄二匹も性奴隷にしちまうなんてな! これからもたっぷり遊べそうだなあ?」
「……」
「何恥ずかしがってんだよ? 別に責めてる訳じゃねえだろうが?」
 してしまったことに対しては何も言い訳ができないコライドンであった。あの二匹相手に随分と楽しんでしまったわけでもあった。一旦興奮してしまったら最後、欲望を出し切ってしまうまでこの獣性というのは抑えることができなかった。もっとも、それ自体はちゃんとコライドンと彼らの間で済ませておけば良かったのが、そんな霰もない姿体をよりにもよってガブリアスに見られてしまった挙句、一緒に絶頂に達してしまったのだから。
 いきなり現れたガブリアスオンバーンの尻にその対になったペニスを躊躇せずに突っ込んで腰を振り始めたのに、コライドンは目を丸くしたのだが、奴は一向に悪びれもせずに息も絶え絶えなオンバーンを背後から犯し続けた。
「何してんだよ? テメエも挿れてんだから、そのクソ雑魚マンコをぶち犯しちまえよ!」
 なんて煽ってくるし、犯されている側の翼竜たちは自分らの置かれている状況などまるでわからず、ただ尻で感じたい一心で腰をくねらせ、アナルをヒクヒクと収縮させるものだからにっちもさっちもいかなかった。もう何度尻をイカされたかわからないプテラの直腸はそれこそ口のように自由自在にコライドンのペニスを捉えてフェラチオしてこようなどするので、黙っていても射精してしまいそうなのだった。仕方ないと言えば仕方ない、けれどもそれはどこまで言っても言い訳にしかならなかった。ガブリアスに煽り立てられた通りにヤケクソとばかりに腰を打ちつけた。ドク、ドクと大きな音を立てながら、プテラの尻から半分ほど肉棒を引き抜いては、すぽっと抜けそうになるかならないかのところですぐさまぐっと腰を押し出し、肉棒を奥まで突き挿す、それを何度も繰り返した。
 コライドン自身とガブリアスの漏らす荒い息と、しゃにむに肛門を犯される二匹の支離滅裂な悲鳴と嬌声混じりの叫びがげきりんの湖畔の草むらに響いていた。それだけが深く記憶に刻み込まれていた。後のことはなぜだかぼんやりしていた。そうして、コライドンもガブリアスも出すものを出し切ってしまった後、失神したプテラオンバーンを捨て置いて、げきりんの湖を立ち去ってしまった。そういうことになるのだと思う。あまつさえ、ガブリアスの背中についていって、巨人の帽子と呼ばれる巨岩を過ぎり、砂嵐舞う砂塵の窪地を俯きながら通り過ぎて、東側の巨人の鏡池に達してしまったのである。
 なぜガブリアスなんかに気落ちしながらも付いていかなくちゃならないのか? コライドンにもよくわからなくなっていた。ただ、ヤリ終わってからガブリアスの奴がいかにも気さくな振る舞いで肩の——胸のところから肩をくるっと回って伸びている群青色の毛に、爪先を乗せて、
「おい、このまま帰るのもつまんねえだろ? ちょっと付き合ってくれよ?」
 と言うからであった。別に付き合わなくても良いし、そういう謂れだってないはずだったのだが、以前こいつと出会った時に聞かされた言葉がコライドンの脳裏を過ったのである。
——俺に付いてきたら、いい情報を聞かせてやるんだがな。
——とっておきの情報だ。もしかしたらだが、お前がいた場所……パルデアに戻れるかもしれねえぜ?
 初対面から、なぜか自分のことを「コライドン」と呼んだガブリアスのことが密かに気になっていなかったなんてことはない。所詮、後出しの理屈かもしれないが、ここでガブリアスが何を企んでいるのかを知っておくことは悪いことではないとコライドンは思った。それに、パルデア——自分があるべき時空、とでも言うべきもの——に戻る手段に心当たりがある、とでも言いたげな態度をガブリアスが示したからには、やはりコイツから聞き出すことは聞きださないといけない、ともっともな理屈で自分を納得させるのだった。
「何、神妙な顔してんだよ?」
 ドスのきいたガブリアスの声調でコライドンは現実に引き戻される。ガブリアスが自分を睨みつける瞳は、しかし好奇心旺盛なワンパチのようにキラキラとしているのが妙だった。コライドンが抱いているのと同様、ガブリアスもコライドンに対して尽きせぬ好奇心を抱いてワクワクしているのが見て明らかな顔つきだった。ドクン、と心臓の高鳴る音を、コライドンは感じてしまった。