2022年自創作振り返り① 『僕ら、砂の箱庭で』編

 

 唐突ですが、今年も振り返りを始めることにします。

 今のところ書いたもの、語るべきものは13作。このところご無沙汰だったブログを使って、思うところを書くことができればと思います。さて。

 

 まずは2022年最初に書いた『僕ら、砂の箱庭で』から。

 今年の4月に開催された「けもケット11」で配布された『ポケモン小説wiki 展覧会 –2022 春–⚣版』のために寄稿した作品です。

 

wiki本の書影 在庫、まだ残っているなら次回以降のけもケで買える……かも?


 昨年末に「ポケモン小説wiki」の管理人のrootさんに声をかけられ、同人誌に初めて参加させていただくことになったので、非常に張り切りました。
 まず初めに、何のカップリングで書くかということを申請しないといけませんでした。考えていた組み合わせは結構あって、「ガラルカモネギ×アローラガラガラ」「サワムラー×カブトプス」だとか場合によってはこれで行こうかと思っていたのだが、あんまりぶっ飛んでいると挿絵を描く絵師の側を困惑させてしまうこともあったので、その中でも一番穏当(なはず)「フライゴン×クリムガン」に決めました。(没ったのもいずれ書くことを諦めてはいません、一応)。
 フライゴンクリムガンの組み合わせは、実を言うとむかし一度書いていました。pixivで作品を投稿し始めた当初、習作のような気持ちでアップした『福のある余り物』という掌編です。

www.pixiv.net

 

 この二匹の組み合わせは昔から良いんじゃないかと思ってたんですけど、これが全然見かけない。パッと思いつくだけでも

・同タイプの比較対象が存在する(フライゴンだとガブリアスクリムガンだとオノノクス
・非600族で中堅どころのドラゴンタイプ
・同期のドラゴンタイプと比べやや肩身が狭い(ボーマンダ、ラティ兄妹、オノノクスサザンドラ、ゼクレシキュレム……)
何となく可哀想でかわいい

 

 とかくっつける要素はなくもないんじゃないかと思ってたんだけれども、フライゴンを「不遇」扱いすることには異論も多いし、クリムガンもまた同様(対戦勢からすれば二匹とも十分な役割や個性を持っているということである)で、共通項がありそうで、もしかしたらそれは僕のイマジナリーによるものなのかもしれず。
 ただ、BW以来10年以上温めていた組み合わせであるからには、どうにかして彼らを絡ませてみたいし、ポケモン2次創作の懐の深さであればそれも可能だろうと、一つこういうCPはどうでしょう、という思いで書くことにしたのでした。
 そうは言いつつも、年明けからぼちぼちと書き始めては、たびたび書きあぐね、大体形が整うには1ヶ月近く要しました。2月に送った初稿のゲラに赤字を入れる作業がなかなかしんどかった。後から読み返すと明らかにおかしい文章が多々見つかり、ため息が出ました。それを逐一修正して、挿絵を入れるページを指示し、ついでに表記も微調整し……rootさんには大変ご迷惑をおかけしました。

 

赤字を入れたゲラ。「ようやく寝ぐらにしている岩陰『まで』そいつがやって来る『まで』」という稚拙な重複に作者の疲弊が感じられますね……

 

 簡潔ながら内容について種明かし。作品の雰囲気のベースになっているのは北野武の『ソナチネ』です。冒頭、クリムガンを何度も蟻地獄の中に引きずり込ませる場面は、言うまでもなく、同映画に登場するクレーンで人を沈めるシーンを下敷きにしております。たぶん知ってる人からすれば展開とかまんまじゃんと思われてしまうかもしれない。

 

「村川さんやめてくださいよぉ! 話聞いてくださいよぉ!」なアレ

 

 フライゴンが抱える虚無感なんかも、たけし演じる村川の諦念と通底させようとしたところがあります。おはいえ、全てがそのままではいけないので、死なせてはいないわけですが。
 もう一つ。結末でフライゴンクリムガンの死体に向かって突然一人語りを始めるところは、メキシコの小説家フアン・ルルフォの『コマドレス坂』から借用してます。20世紀ラテンアメリカ特有の生と死の境目が曖昧になったあの世界観と、たかが自分の2次創作を同列に語るなんてことはもちろんできないですが、少しでも巨匠の顰みに倣うつもりで、字書きとして試みさせてもらいました。
 それにしても、僕の書いてるものって、当時観ていた映画とか読んだ小説とかに多かれ少なかれ影響を受けることが少なくありません。『彼岸島』ほどではないとはいえ(?)、インプットしたものは何かしらの形ですぐに出したくなってしまうのです。あまり露骨に過ぎるとオリジナリティ的にどうだろうと思いながらも、ある程度自由なことができる二次創作だから、やりたいことに素直になってみたというところです。何より、そういう扱いされるクリムガンってものすごく「らしい」し。ごめんよクリムガン
 今作について、後から色々と感想をいただきましたが、それで気付かされるのは僕はわりかし話の前提になる設定をボカすクセがあるということ。小説でもフライゴンクリムガンがこれまで何をしてきたのかについてはほとんどにおわす程度の描写しかしませんでした。というのも、具体的に書くほど特別なものでもないだろうし、読者のふんわりとした想像から大きく逸脱するものでもないだろう、という考えからでしたが、それは場合によっては弱みにもなりうる……
 今作はpixivやwikiなどではいまのところ公開していないですが、本が完売になったタイミングを見ていずれはweb再録する予定です。一応冒頭は次のリンクからお試し読みできますので……

 

www.pixiv.net