2022年自創作振り返り④『哭壁に還る』編

「ドラパルトはん! ドラパルトはん!」
「うああっ!……うああっ!……」

 

前々回の『黒曜に触れて』に引き続き、ヒスイ地方を舞台とした作品です。

バサギリには一目惚れしたと書きましたが、もう一匹発売前から心を惹かれていたヒスイのポケモンというのがあり、このブログまで逐一読むような人なら言わずもがなでしょうが、それがイダイトウでした。

何せ発売前の段階から小説に登場させていたもので。クソホモ童貞ドラパルトシリーズ(?)こと『ミイラ取りはミイラになりたい』にも『PART5』にて「カロン」という名前で出演しています。発売前のイメージだけで書きましたが、こってこての関西弁を喋らせているうちに愛着が湧いたため、現在ではほぼほぼレギュラーキャラになってしまいました。

 

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最新エピソードではとうとうカロス旅行に出てしまうくらいにはマブダチに

 

しかし、いざ『LEGENDS アルセウス』をプレイする段になって、改めてイダイトウの作中での設定を知るとともに、ヤツが住まう「群青の海岸」のストーリーにグッとくるところがありました。メインシナリオ「キングのいない島」ですね。

 

ウインディ(ヒスイのすがた) いやーキング戦は強敵でしたね……

 

本編から遡ること数年前、かつて同地のキングであったヒスイウインディが崖から落ちそうになった我が子を救おうとして、逆に自らが海へ転落してしまい命を落としてしまう。キングを見守るシンジュ団幹部の考えもあり、海岸にはキングがいないまま、現在に至る——作中ではキングの子たるヒスイガーディが紆余曲折の末、臆病心を克服しウインディへ進化を果たす顛末が描かれます。シンプルな展開ながら、非常に印象に残るエピソードです(ボス戦の難易度も含めて)。

不慮の事故で命を落としたキングと、群青の海岸に住まうイダイトウ。この二匹で何かを書けないか、と考えたのが『哭壁』の始まりです。それに、「哭壁」という単語自体、その頃、柄ではないんですがプライベートで人様の書作を拝見する機会というのがあり、そこで目にした作品の一つに「哭壁」と大きく筆で書かれたものがあって、おお、ってなりました。これをタイトルに使おう、と即断しました。

個人的にゲーム中のエピソードから話を着想するというのは珍しいことです。基本的には推しの顔の良さから話を組み立てがちなので。ただ『哭壁』については初期のイメージが固まるのは早かったと思います。帳峠の断崖で慟哭するイダイトウのイメージが浮かび上がり、じゃあ、ヒスイウインディが命を落としたあの崖の切り立った岩壁を「哭壁」と見做したらどうだろう……と言った感じ。

 

大魚の隠れ岩方面より「哭壁」こと、帳峠の岩壁を眺める

 

もう一つ、冒頭で年老いたイダイトウがドククラゲの触手に絡め取られて絶命の際にあるところから小説が始まりますが、このイメージにはレスポンス元が存在します。

 

こういうの美しいって思います

 

僕は字書きとしての宗教的政治的所謂自己愛的信念(?)のゆえに、交流のない絵師の絵を頻繁にRTすることを避けているんですが、全く作品を顧みていないわけではなくて、そこから作品のインスピレーションをたびたび得ています。これもイダイトウ発表当時にTLに流れてきたもので、直接的なエロではないですがエロスを感じさせると思います。「不逞千万なドククラゲの触手にその身をきつく締め上げられれば、朧になりゆくうちにイダイトウは喀血するように泡を吐いた」という書き出しで、そのイラストのイメージを自分なりに文章化してみた、というところでもあります。

ただ、2月辺りの冒頭を書いてから実際に作品が出来上がるには2ヶ月ほどを要しました。自分から難渋な書き方を選ぶのももちろん悪いのですが、今振り返るに、ヒスイウインディをイダイトウと同じ熱量で描写が出来ただろうか、と反省があります。その点をより深めることができれば、同じく人に崇められる両匹の関係性をより突き詰められたのではないか、と思います(それはこれを読んでもらった字書きの感想から知らされたことでもあります)。

過去の行いを悔い、自ら砂の手に不細工な石塔を積み上げるイダイトウはカワイイと思います。それと同じような魅力をウインディにも行動を通じて描ければ良かった。しかし完成したものが全てです。字書きにできるのは次を書くこと、書き続けることだけですね。あと、バクフーンのキャラ付けは気に入ってます。また登場させたいなって。

 

上空から「砂の手」を見下ろす。この浜辺でイダイトウは石を積み重ねていたのだ

今作、見たところpixivではブクマ7に対していいねが5倍の35貰っているという、自作でも一番謎の反響をいただいた作品でもあります。反応数で言えば、おそらく今年トップですね……不思議

 

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